密やかな桜遊戯
爽やかな風と共に白を基調とされ統一された部屋の大きな窓から
ヒラリヒラリと淡い桜色の花弁が室内へと舞い散る。
静かな室内に衣擦れの音と共に確かな存在感が浮き上がる。
唯一の隻眼を細め眩しいほどの光の中舞い降りてくる花弁に届くはずもなく手を伸ばす。「……もう春か。」
視界を邪魔する髪をかき上げながら静かに目を閉じて立てた膝に肘をつき昨晩を振返る。柵が無くなるのはこの鳥篭のような一室の中だけ。
入ればそこは2人しかいない空間、邪魔するものなど何も気にするものなど何も繕う事もせず気遣いなど必要のない2人だけの空間。
言葉を交わすまもなくベットで交し合うは素肌同士での交歓。
互いに邪魔する楔は多く、何もかも気にすることなく触れ合えるのに言葉など邪魔なだけ。まぁ、言葉にすることも大事だがそんな消えてしまうものより確かな実感が大事だと思うは共に同じこと。
キスを交わし、抱き締めあい、瞳で言葉を交わして隙間を補い合う。
過ぎ行く時間など気にせずに互いが互いに貪り合い満たされる心。
隻眼の男は思い出した鮮やかな享楽の刻に楽しげに口角をあげ、声を出さずに笑う。
いまだ眠りをむさぼり、シーツに包まる白銀の麗人の寝返りによって白銀の髪が優雅にシーツをたゆとう。
起きたかと身を強張らせるのは一瞬、
日の光を背にいまだ完全には起きていない光秀に彼にしか見せない皮肉もなく
ただ穏やかな笑みを向け目に掛かる前髪をゆるくかき上げてやる。
「Good morning。よく眠れたか?」
問いかけは甘く、穏やかな空気だけが辺りを包む。
「・・・・・・」
払われた髪の一筋を追う様に視線を政宗へと向ける。
「眠れはしましたよ、久しぶりに眠りましたとも」
政宗の背越しに見える朝の日とはらりと室内に風と共に来る花弁にぼんやりとした視線を細め眺める。
「桜が綺麗だぜ?いっそう映えて綺麗だ」
「くくく、貴方寝ぼけてるんですか?」
いつになく穏やかな表情と共に紡がれる言葉に余りにも似合わないと腹の底から可笑しさがこみ上げる。
「はっ、こんな時だからこそ言えるんじゃないか」
こんな時こそ甘い言葉がいいだろうと風に乗って髪の毛に降り積もる花弁を一片摘みしゃくりと食む。
「こんな空気がありえなさ過ぎて…どこか異国に行ってしまいたくなりますよ」
全ての柵を捨て置いて逃げてしまうなんて出来ないことを思うほど今のときがイトオシイなんて本当にありえない。
2人の顔に浮かぶ笑みに桜の優しい花弁の風が室内へとよりいっそう吹雪く。

*おともだちの白吏が書いてくれた現代版・政光。
うちの二人よりよっぽどあいつららしいではありませんか…と頭の下がる思いでございます…ジャンル違いもいいとこなのに、どうもありがとでしたー!
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