変わらない
「あなたはどこの世界でも、変わらぬのだな」
 顔に傷を持つ葛葉ライドウ十四代目がそのように言うので、ヴィクトルはおや?と思った。なにより、青年の様子からして違和感がある。ヴィクトルの知る十四代目は同じ顔、おなじ声であるが、さまざまに異なる点がいくつかあった。まずは顔についた大きな傷あと。それから、身に纏う香り。そして極めつけに、言葉の端々が、こちらのほうがいささか若いように思えた。
「我は」
 しかもこの「我」という一人称もはじめて聞く。徹底しているな、とは思わない。代わりに、これはほんとうに異世界の住人ということらしいなと判断する。
 それで「ほう」と笑うと異世界の葛葉がニヤリと笑った。
「なんだ、そんなに違うか」
その笑みはひどく男くさいもので、顔ばかりならば、まだ中性的なところが消えぬこちらの十四代目とは一目瞭然に違う人物の顔であるのがよくわかる。
「あなたは、我の知るドクターと変わりがないようだな」
「そうかね。まぁ、我が輩にとってはおぬしが別人であろうと、結局は葛葉。私に有益なデータをもたらすサマナーに違いあるまい」
尋ねれば、く、と雷堂は喉を鳴らした。らしくない。それでいながら「ほら」と言いたげな唇は、こちらの十四代目にも見えた。
「やはり、どちらも我にやさしい」
 なるほど、どこの世界でも十四代目はこうなのだなと納得して、ヴィクトルは鼻を鳴らした。
「おぬしらはどちらも、人の話を聞かないようだな!」  
*ライドウ世界で雷堂とヴィクトル。

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