白詰草
「それは?」
 ライドウは誰にもらったのだと尋ねたつもりだったのだが、同じ顔をした男は、膝に載せた手製の冠に視線をお年、それからライドウを見、最後に恥じ入るように帽子の鍔を下げた。
 石段に腰を降ろす黒ずくめの書生は、同じ姿格好のライドウからみても威圧感があり、そのように気弱そうな態度は似合わない。似合わないのだが、「指は覚えているのだな」と呟く口元が、わずかにはにかんでいる。めずらしいものだな、とライドウはすこしおもしろくなった。
「ということは、あなたが?」
「意外か?」
 その指先は自分と同じように刀と拳銃の扱いに炊けている。だからこそ、その指がこのように白詰草を器用に編み上げる事ができるとは、ライドウは知らなかった。
 ライドウの驚いた声に雷堂は顔をあげたが、自分と同じ顔が、自分と同じように驚いた表情を隠していないことに驚いたようだった。
「こちらの十四代目はつくったことがないのか」
「――あなたがそれを作るということのほうが、異様だと思うが」
「異様か?」
「そんなすごみのある顔で、花冠とは」
 不思議そうに尋ね返す雷堂がなにやら幼く思えて、ライドウは膝を抱え込むようにしてしゃがみこんだ。そうすると、石段に腰を降ろしたまま冠を両手で持て余す雷堂は、照れ隠しのように顔をしかめながら尋ねた。
「おかしいか。女子のようで」
「かわいらしいね」
「ふざけるな」
「ふざけてなど」
 ライドウは否定したが、その笑みにからかいの色が透けた。
「しかし、どうしてこんなものが編めるんだ」
「里のこどもにせがまれた」
「ふうん」
 それはほほえましい。つぶやきながら、ライドウは冠をとりあげてやった。そんなもの、自分にはなかった。そう思い返すのが、すこしばかりつまらない。
「十四代目?」
「――わたしとは、ほんとうに違うのだな」
「フ、寂しいか」
「ちっとも」
 すねたような声を気取られ、馬鹿にするように雷堂が笑うので、ライドウは呆れたように答えた。だが、一方で雷堂の隣に腰を降ろし直すと、肩へと甘えるように頭を置き、ぽつり、と本音をつぶやいた。
 聞き逃されてもかまわない言葉だった。
「――妬ましい、かもしれない」
 だが、もちろん雷堂の耳はそれを拾った。
 そのようにライドウが甘えてくるのは珍しい。雷堂はすこしおもしろく思ったが、からかわずにそのまま黙って肩を貸してやった。
 
*昨年のライドウオンリーで無料配布したおまけ。データなかったけど紙が出てきたので。当時「雷堂に甘えるライドウ」が私のなかではやっていたそうです。(余談抜粋)

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