受け入れる
 側に並ぶと、自分が奴の細長い影のなかにすっぽりと入ってしまうことに気づいて顏をあげた。と、長い髪をわずかに揺らして小首を傾げるその男はその視線を受けたように、一拍を置いてから静かな足取りで隣に並んだ。足音は砂利がわずかな音を立てただけでほとんどなかった。まるで影のようだな、と思う。そこにあるのが当たり前で、誰にも侵されぬ静けさを持っているそれは、どこか恐ろしい。やはり似ている。そのようなことを考えていると、それに付き従う正真正銘の影は足取りに比例して色濃く落ちながら、徐々に位置を変えていって、とうとう自分のことを開放した。ひどくあっさりと訪れた瞬間に拍子抜けさえした。
しかし「わかったのか」と訊ねれば、「なにがです」としらを切るように目を閉じながら薄い唇を開かれた。そして何かを言われたようであったが、耳には入らなかった。ただ、その仕草が口を吸えと要求されているようだ、と思い、それからこれは睫毛まで白いのか、とその伏せられた瞼の縁取りに吸い寄せられるように手をそえれば何やら伝わったようで、奴は自分を見上げて俺が手を伸ばしている間中ずっと、目を開けずにじっとしていた。

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