書簡
 粛啓
 寒気ことのほか厳しく、雪深い奥州ではさぞ穏やかな日々をお過ごしの事かと存じます。
 こちらも湖面も凍るような寒い夜が増えてまいりました。つのる寒気に貴方の領地を思い出し、筆を取った次第です。
 そろそろ寒牡丹の咲く頃になりましたでしょうか。いつか貴方が熱弁をふるってくださいました白雪に埋もれた霜除けとそこで囲み護られた牡丹のさまを想像しては、ただただ嘆息するばかりでございます。是非一度拝見したく思っております。いくらか寒さのゆるんだ頃でもこの願いを叶える事が出来れば良いのですが、如何でしょうか。
 末筆ながら、時節柄くれぐれもご自愛のほどお祈り申し上げます。
 恐々謹言
 明智十兵衛光秀
 伊達藤次郎政宗様
       侍史


 略啓
 降雪の候 貴信、確かに拝受いたしました。
 さて冬牡丹ですが、庭に出てみますとそろそろ咲くか咲かぬかといった具合で、まるで貴公を待っているかのようです。
 霜除けの下で色づき、開き始めた蕾が日に日に開いて行くさまを眺めるのはなんとも嬉しく、この穏やかな日々の退屈な時を忘れさせてくれる大事なものとなっております。色付いた花びらが綻ぶところを貴公と眺めることができればと願わずにはおれません。
 ご多用中のところ恐れ入りますが、どうぞ雪の晴れ間に足を運んでくださいますようお願い申し上げます。
 草々
 伊達政宗
 明智十兵衛光秀殿
       机下


 謹復
 御丁寧な書簡にて恐悦至極。
 雪国の冬は長いと聞き及びますが、やはり退屈を過ごしていらっしゃる御様子。失礼ながら貴方の焦がれに焦がれたそのお顔を想像しては雪に嫉妬をしている始末です。手慰みのように寒牡丹を眺める貴方はとても静かで美しいものでありましょう。それを想像すると楽しくて仕方がない半面、とても虚しく思います。しかし雪解けはまだ始まらぬようです。待ち遠しくてなりません。
 敬白
 光秀
 伊達政宗様
    侍史
 追伸
 星さえ凍えそうなほどの寒空の暗い色味にそちらで観た寒々しい海の色を思い出してばかりおります。


 前略
 顔が見たくてたまらず文を書いています。牡丹なぞいくらでもくれてやるから雪解けなど待たずに会うことができないだろうかともどかしく思っている次第です。しかし待ち遠しく思っているのがこちらばかりではないようで安堵しました。
 俺の姿などよりも、魔王でさえ目を留め置くその尊顔を眺めるほうが牡丹も喜ぶことでしょう。おかげさまでどうすれば如月を過ぎても冬牡丹をみせることができるのかを考えてばかりおります。
 政宗
光秀殿
 貴下


 再呈
 この書簡が届くころには俺がそこにいるかもしれないが、万が一のために文を送っておく。どうかお前が冬牡丹を抱えた愚かな俺のことを迎え入れてくれることを願ってる。まだるっこしいのはやめだ。会いたい。
 敬具
 政
 光秀へ


*一度書いてみたかった往復書簡小説…です?
色々いいかげんですが、feelingでここはひとつ……。

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