ちぎる
 あまりのしつこさに折れて牙をたてれば、ライドウは周囲の女学生の腰を砕きそうなほどに蜜のごとき微笑をうかべて、目付役の小さな額に接吻をした。
「ゴウト、やさしい」
 それはすこし、意図した反応とは異なるもので、ゴウトは小さく唸らざるをえなかった。「……噛み千切ってやればよかったか?」
「その牙がケルベロス達のように鋭ければ実現したでしょうね」 言葉を重ねどもライドウは満足げで、それが目付役としては不満なのだということに彼はすこしも気付きはしない。「ゴウトの好きなように、契っておくれ。僕の薬指はそのためにあるのだから」
しかしそれならばとせめて、正気とは思えぬ言葉を吐きながら黒猫の肢体を捉えるライドウの、その熱の籠った瞳を閉じさせたくて、ゴウトは仕方なしに彼の目元に前足を伸ばした。
「そうか、生憎だったな、十四代目。しかし俺はおまえと契るようにはできてないんだ」そして喉の奥で嘲るような笑いを飲み込む。

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