見えねども
 横たわる書生の、整った面差しを見つめる。
 身じろぎもしないそれを見ていると、なにやら磁器でできた人形ではないかと思えるのだが、触れてみれば控え目ながら熱を感ずる。おかしな生き物だ、と鳴海はしみじみ思わずにいられない。しかもそれは悪魔使役士という生き物特有のものではないように思える。
 そもそも鳴海はほとんど、悪魔というものも知らない。曲がりなりにも葛葉と縁を持った一人ではあるが、かといってそうした目をもっているわけもなく、そのためにか、ほとんど見た事もないのだ。
 だが、黒猫が呆れたようすのくせに近寄らぬのを見ると、ライドウの背になにものかがいるのであろうことはわかる。しかし本当に悪魔であろうか。
 ライドウの背を撫でようとすると、なにかがぞくりと指先から這い上がるような寒気が襲ってくる。鳴海は思わず強がって喉だけ笑った。

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