浸る
 幼き日に目玉を取り出したという証は、たとえ褥のなかでも、ほとんど外されることがない。
 だが、そこに隠されている皮膚の引き攣った傷跡は十年は前のものであると聞き及んでもなお生々しく、たとえ血泥にまみれてもそこへ煌々と輝くものを秘めているのではないかと感ずるものに違いないのだ。
「わからねぇな」
 光秀がその喪失を労るように撫でていると、当の本人が、呆れた様子で言った。眼帯をつけたまま、褥で肘をつきながら横になった青年は月明かりで影の落ちるなか、そうしてきらりと輝く瞳を隠すように左目を細くした。
「あんたの美醜はむずかしい」と呆れた様子へさらにつまらなそうな溜息を付け加える。
 この政宗の、そうした部分が光秀にはすこし、つまらない。
 だが、このような男が、しかし戦場で熱に浮かされたその後にはなにも残さないのだ。
 それが、光秀の気に入るところである。
「結構ですとも……あなたの理解はとくに必要ではありません」
 光秀は囁くようにして、眼帯の下へ隠された傷を想った。もちろん、眼帯越しに幾度指をそえたところで光秀にはなにもわかりはしない。当然のことだ。
 あるのはただ、あるべきものを喪った眼下がすこしくぼんだ様子を指先が訴えるので、嗚呼自分が目玉をくりぬいてやりたかったなと少し残念に思う程度のものである。

*まぁ、こういうどーでもいいやりとりが繰り返されているのではないかなーということに萌えているわけで…

<<return.

*Using fanfictions on other websites without permission is strictly prohibited * click here/ OFP